絵描きの植田さん

絵描きの植田さんは、
自宅の火事で「彼女」と「音」を
失いました。




いしいしんじ植田真の小説画集。
この季節に読みたいストーリー。


火事の後、植田さんは一人山奥に移り住み
絵を描き、暮らしている。
植田さんの仕事は「絵描き」だから。


植田さんの家の前には、湖がある。
湖の「こちら」と「向こう」に人が住んでいる。
ある日、湖を渡って「向こう」から母と幼い娘が
「こちら」にやって来た。
二人は向こうで巻き込まれた、面倒な事から逃れるためにやって来た。


隣り合わせに住むことになった
植田さんと隣の娘メリは、スケッチブックで筆談する。
自然を愛するメリと、音のない世界に暮らす植田さん。
深い雪と氷に閉ざされた季節に起きた出来事は
春の訪れに合わせるように好転していく。


春の日差しが雪を解かしていくように、
メリは植田さんの心を解かしてくれた。
植田さんの心にも春が来る。


静かで、繊細で、透き通った物語。



「絵描きの植田さん」


いしいしんじ/著
植田真/絵
ポプラ社 1300円(本体)
ヤングアダルト




植田さんの絵、いいです。