アナ=ラウラのタンゴ


悲しみや不安
喜びや希望
様々な感情を表現するタンゴ
そのタンゴのような物語


「あれは明日から夏休みという日だった―――
死んだはずのパパがタクシーに乗っているのを見たのは。」
と始まるこの物語は、読み出した瞬間に引き込まれてしまう。


学校帰りにバスの中から見たタクシーに乗っていた人は、
「確かにパパだ!」とラウラは確信する。
特徴のある髪型、鼻をこする癖。
ラウラの父親は、
2年前出張先の、ホテルで火事に巻き込まれて死んだ。
だから、タクシーに乗っているなんてありえない。
はず・・・
しかし、ラウラは父親にうりふたつのその人物の事が気になり
父の死にまつわる謎解きを始める。


ミステリー仕立ての物語で、
話はテンポよく進んで行く。
しかし、この物語はただのミステリーに終らない深さがある。
それは、登場人物とドイツの過去の歴史が関わってくるからだ。


ラウラの新しい父親になる予定のペーター
ペーターの息子のオリバー
病に倒れ記憶障害が残った祖母ゲルダ
父親の仕事仲間のアーマン
アルゼンチン出身のカルロス・アルヘン
祖母の古い知人のアガーテ
ドイツナチス


父親の死の謎を探れば探るほど、
深まっていく謎。
作者の言葉を引用すれば、
ラウラの揺れ動く心を描き出す
憂鬱と希望、情熱が入り混じった「タンゴフィーリング」
な物語です。


「アナ=ラウラのタンゴ」

ヨアヒム・フリードリヒ/作
平野卿子/訳

POPLAR  ポプラ社    1300円

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