キップをなくして


キップをなくした子どもは駅から出られません。
だから、ステーションキッズになります。


自分の生まれた年の切手収集が趣味のイタルは、

銀座にある切手ショップに出掛けた。

有楽町の駅を出ようとすると、確かにあったはずの切符がない・・・。

改札の手前でポケットやリュックの中を探していると、

女の子が近づいて来て「切符を無くした子どもは駅から出られないのよ」

と言って、イタルは東京駅に連れて行かれた。

構内の奥の詰所に行くとそこには、同じように切符を無くした子どもたちが居た。

その日からイタルは「駅の子」としてみんなと一緒に、

東京駅で暮らすことになった。

「駅の子」は駅の構内から出なければ、どこまでも電車に乗れる。

「駅の子」は時間を止めることができる。

「駅の子」はキオスクでただで買い物ができる。

「駅の子」には大切な仕事がある。

「駅の子」の中に一人死んだ子どものミンちゃんがいる。

人は死んだらどうなるんだろう・・・

鉄道を舞台にした、長編ファンタジー




「キップをなくして」

池澤夏樹/著
角川書店 1500円

小学高学年〜


定期券を無くした子どもも「駅の子」になります。