わたしたちの帽子


古いタンスに忘れられたキルトの帽子
一目で気に入ったその帽子をかぶって、
サキがビルの探険に出掛けると…



五年生を前にした春休みに家の改装のために、一ヶ月だけ街中の家具付きの部屋住むことになったサキ。

お洒落なビルを期待していたのに、着いたところは暗くて古いビルで、階段や廊下が奇妙な具合につながって迷路のようになっていた。

仮住まいの部屋を探索すると、古いタンスの中にキルトの帽子があった。

サキがかぶってみると気持ちが、ふんわりワクワクしてきた。

その時、鳥かごから飛び出した小鳥のチルルがドアの隙間から廊下に出ていってしまった。

慌ててサキが追い掛けて行くと、白いブラウスにまるい緑色のスカートをはいた女の子がチルルと遊んでいた。

サキと同じキルトの帽子をかぶっているその女の子の名前は育(いく)。

古い懐かしいものに引き寄せられるように、サキはすぐに育のことが大好きになった。

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サキと育の過ごす時間の中に、過去の時間が入り込んでくるような錯覚にとらわれてしまいます。

遊んでいて楽しく感じるのはそれが現実だからですよね。

もし、それが幻だとわかったら不安に変わってしまうでしょう。

お揃いの帽子が引き寄せてくれた、70年の時を越えて、思い出が今につながる物語。

最後にすべてのつじつまが合ってすっきりして終わるかと思っていたのに…

一つだけ、不思議なままで
ちょきん・ぱちん・すとん、
はなしは、これで、どんはらい

お・し・ま・い・


「わたしたちの帽子」

高楼方子/作
出久根 育/絵

フレーベル館 1300円/2005年10月初版
小学校中学年〜


チルルは幸せの青い鳥?

帽子提供/キッシーズあやの


女の子の名前「育」とこの本の絵を描いた出久根さんの名前「育」が同じなのは、偶然?