あたしの一生


猫のダルシーの物語

けっきょくのところ

もんだいなのは愛ということ


全編「あたし」という一人称で語られる、猫の物語。

ダルシーの飼い主である人間は「あたしの人間」。

猫と人間がお互いを見初め、出会う。

そして、17才4ヶ月と1日の最後の日、

お別れを言うまでの「あたし」と「あたしの人間」の

愛の物語。

動物と暮らすことで与えられる、喜び、悲しみ、癒し。

著者の猫を観察し、洞察することの細やかさに著者の猫へ深い愛情が感じられる。

「あたしの人間」がダルシーに語りかける。

でも、人間は猫の言葉が理解できないことをちゃんとダルシーは知っている。

そんな時は、思いを込めて人間の目を見つめるダルシー。

一定の距離を置いて人間と付き合うと自ら決めるところが、

実に、猫らしい。


エピローグではじめて「あたしの人間」が誰なのか

何をしている人なのか分かります。


あとがきの江國香織さんの言葉を引用すれば、

「ストレートで、強く、正確で、濃密な、愛の物語。

  もし誰かを本当に愛する気なら、ダルシーのように生きる以外にないのではないか、

  と、思いました。― 中略 ―

  全編をとおして、すじが通っています。ダルシーには、すじが通っている。

  そこに私は胸を打たれました。」



猫を飼っている人には是非読んでもらいたい。

もちろん、そうでない人もね。

猫を見る目が変わるか、その通りと納得がいくかのどちらかです。




「あたしの一生」猫のダルシーの物語

 ディー・レディ/著

 江國香織/訳



我家にも2匹の猫がいますが、

彼女たちもこんな風に思っているのだろうか?

と思って猫たちを見ていると「きっとそうだ。」と確信できる。

・・・そうだと思いたい。