ルチアさん

「ここ」に根をおろすことができるのは、

行ったことも、見たこともない「どこか」を

自分の内に持っているから。

そこは、遠くてきらきら輝いている。

ずいぶん昔、《たそがれ屋敷》に奥様と二人の娘と二人のお手伝いさんが暮らしていました。

ある日やって来た、新しいお手伝いさんのルチアさんは、
一つ違いの姉妹、スゥとルゥルゥにだけ水色に光って見えるのでした。

丸いからだを弾ませて、ハミングでもしているかのように元気いっぱいに働くルチアさん。

ルチアさんの前では、なぜか心の中にしまったなにかしら輝くような思いを、

そのまま表に出してみたくなるのです。

スゥとルゥルゥは、ある晩ルチアさんが水色に光る謎を知ろうと夜中に屋敷を抜け出し、ルチアさんの家に行きます。

真夜中の台所でルチアさんは、水色に輝く液体を飲んでいました…



それから長い年月がたったある日、今では人手に渡ってしまったたそがれ屋敷に一人の年輩の女性が、スゥとルゥルゥを訪ねて来ました。

その人は、ルチアさんの一人娘のボビーでした。

ボビーが置いていった手紙を読んで、忘れていた40年前の記憶がスゥの脳裏に鮮やかに甦ります。



「ルチアさん」

高楼方子/作
出久根育/絵


小学高学年〜


あれはね、ここじゃない、どこか遠くの味がするの。