狐笛のかなた

少女小夜は12歳の秋、霊狐である野火と出会う。
小夜と野火のまっすぐな二つの心の物語。


守り人シリーズ」の著者、上橋菜穂子のなつかしい場所の物語。


「聞き耳」の才を持つ小夜は“取り上げ女”(産婆)の祖母と
里の外「夜名ノ森」の端に二人だけで住んでいた。
小夜は12歳の秋の夕暮れ、
傷ついた子狐(野火)に出会う。
猟犬に追われる狐を背負い、
追手から逃れるために、森蔭屋敷に逃げ込み小春丸と出会う。


その後、月日は流れ祖母が亡くなり16歳になった小夜は
祖母の仕事を受け継ぎ一人で暮らしていた。
小夜は年越しの市に出かけ、
術の使い手である大朗とその妹、鈴に出会い
長い間封印されていた過去の忌まわしい記憶が甦る。
それは、自分の出生と母の死に纏わるものだった。


自分の力ではどうすることもできない運命に翻弄されながらも
ひたすらに、自分に正直に生きようとする、
小夜と野火の、孤独でまっすぐな心の物語。


息を呑む展開にあっという間に物語に引き込まれてしまいます。
最後まで一気に読めます。


「狐笛のかなた」


上橋菜穂子/著
理論社   1500円

ヤングアダルト


「箸が転んでも悲しい年頃」の私は
どうしても、涙なくしては読めません。