虎よ、立ちあがれ


悲しみは、上にのぼらせてやるもの。
そして、自分の事は自分で助けるもの。


お母さんを癌で亡くしたロブは、
父親と一緒にフロリダから新しい土地に引っ越してきた。
その日から6ヶ月が経った。
その間、ロブは一度も泣いていない。
お母さんのこと。
願い事をすること。
ともだちをつくること。
眩しい太陽を見上げること。
みんな、みんな心の中で
スーツケースに閉じ込めて鍵をかけた。


新しい学校の6年生を迎えたロブは、
毎日スクールバスに乗ったとたんにいじめられる。
でも、そんなことはどうでもよかった。
そのまま何の反応もしないでいれば、
相手もあきらめるから。
そんなある日、
スクールバスに見た事のない女の子が乗ってきた。
システィンは新しい転校生だ。
よそものを受けつけないこの土地では、
システィンもやはりいじめられる。
彼女は、洋服も顔もどろどろになりながら、
げんこつを振り回しクラスメイトにはむかっていく。


父親の仕事先のモーテルで暮らすロブは、
ある日、裏の森で檻に入れられた虎を見つけた。
その虎の輝く体と瞳にロブは釘付けになる。


足の湿疹の感染の疑いをかけられ、
学校に行かなくてもよくなったロブは、
同じモーテルで働くメイおばさんに言われる。
「湿疹の原因は、悲しみを足もとに溜め込んでいるからだ、
 悲しみは上にのぼらせてやるものだ」と。


心を閉ざしていては、先に進めない。
森の中で見つけた虎は、
ロブにスーツケースを開く鍵をくれたのだ。



「虎よ、立ちあがれ」


ケイト・ディカミロ/著

はら  るい/訳

ささめや  ゆき/絵


小峰書店   1400円   2005年12月発行


小学校高学年〜


女予言者のメイおばさん