青空のむこう


「あの世」から「この世」に戻ってきたハリー。
「この世」にやり残したことがあるから…。



交通事故で死んでしまった、ハリー。
死者の国は、夕暮れの時間がいつまでも続いているようなところ。
死者は目的もなく、歩き回っている。
死んだ自覚はないようにみえる。
生きている時には、絶えず生きていることの意味を問い続け、
死んでも、死んでいることの意味を問い続ける。
いつか、〈彼方の青い世界〉へ旅立つ時が来るまで。


ハリーは姉のエギーにひどいことを言ったまま、
自転車で家を出て、トラックにひかれて死んだ。
「どうしても、エギーに謝りたい。」
その気持ちを伝えるために、
ハリーは、この世に戻ってきた。
でも、死んだ人間は誰にも見えない。
どんなに大きな声を出しても誰にも聞こえない。
そして、爽やかな風を頬に感じることもできないのです。
そんなハリーでも、エギーに謝ることができるのでしょうか?


ハリーは、この世に戻ったことで、
自分が死んだことを実感していく。


悲しく、切ない物語なのだが、
ユーモラスに回りを眺めるハリーのおかげで、
悲し過ぎないところがいい。
さらに、回りをユニークな登場人物にかためられているところもいい。


「死」そのものに希望はないが、
彼方の青い世界に旅立つ為の、
希望に溢れた冒険物語のようでもあります。


「生きている」ということの大切さ、素晴らしさを教えてくれる物語。



「青空のむこう」


アレックス・シアラー/著
金原瑞人/訳


求龍堂 1200円


ヤングアダルト


青空の向こうには、何があるのか?